母乳や牛乳に多く含まれているラクトースは炭水化物の一種で、胎児や乳児の健全な発育には欠かすことができない重要な栄養成分です。具体的にラクトースにはどんな働きや効能があるのか考えます。
ラクトースは大切なエネルギー源
ラクトースは別名、乳糖とも呼ばれる炭水化物のひとつで麦芽糖やショ糖とおなじく少糖類に属するものです。ブドウ糖とガラクトースが結合したもので哺乳類の母乳や牛乳に多く含まれています。乳糖と聞くと練乳のような甘さを想像するかもしれませんが、ショ糖に対し甘みが5分の1程度と甘みが少ないのもひとつの特徴といえるでしょう。三大栄養素のひとつである炭水化物のなかでもでんぷんやショ糖と並ぶ大切な栄養素となっています。
母乳に含まれるラクトースの最も大切な働きは胎児のエネルギー源になるということです。ラクトースは胎児や乳児にとって唯一の栄養である母乳に含まれている重要な栄養素であるため、ラクトースの摂取が不足すると発育に影響が生じてしまいます。これは、胎児や乳児には炭水化物を消化する酵素であるアミラーゼを分泌することができないため炭水化物の代わりに乳糖をエネルギー源として摂取する必要があるためです。母乳のなかにはラクトースのほかにガラクトースという炭水化物も含まれていて胎児にとって栄養価が高いものとなっているからこそ母乳だけですくすくと成長することができるのでしょう。
ラクトースの分解
ラクトースは食品やサプリメントから摂取すると難消化性という特性から胃で消化吸収されることなくそのまま小腸まで届きます。小腸でラクトースを分解するのに欠かせないのが乳糖分解酵素であるラクターゼです。日本人はラクトースを分解する力が弱く大腸でラクトースが乳酸発酵される過程で生じる乳酸と二酸化炭素によって大腸が刺激され腹痛や下痢の症状を起こすことがあります。このようなことが原因で牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなるという方がいますが、最近ではあらかじめ牛乳に含まれたラクトースをラクターゼで分解処理したものも販売されていて通常の牛乳の代わりに購入することができます。
分解されたラクトースは小腸で粘膜に吸収されながら善玉菌をどんどん増殖します。ラクトースは善玉菌の代表である乳酸菌の栄養素となって乳酸菌を増やして小腸の働きを活性化します。また、善玉菌を増やすだけでなく悪玉菌の働きを抑制する効能もあるため結果として腸内のぜんどう運動が活発となり老廃物の排出がスムーズに行われるようになるのです。ラクトースの分解、吸収がスムーズに行われるとカルシウムやマグネシウムの吸収率も高まるといわれています。
ラクトースと牛乳
ラクトースを含む食品として代表的なものに牛乳がありますが、なぜ牛乳を飲むと骨が丈夫になる、成長するといわれるのでしょうか。牛乳といえばカルシウムをイメージしますが、実はカルシウムの含有量はそれほど多くはありません。カルシウムはリンやマグネシウムなどとともに骨や歯を形成し健康な体をつくるのに必要な成分ですが、メインとなる栄養成分は良質なたんぱく質です。
牛乳に含まれるラクトースの消化、吸収がスムーズに行われると腸内で乳酸菌を増殖させます。乳酸菌が増殖すると腸管からカルシウムやマグネシウムの吸収する能力が高められるため結果として骨が丈夫になるのです。このように牛乳に含まれるカルシウムだけが骨の強化や成長に効能があるわけではないということをきちんと理解しておきましょう。エネルギー源であり善玉菌を増やす働きもあるラクトースですが、摂り過ぎると中性脂肪となって体内に蓄積されてしまうのでその点にも注意が必要です。
ラクトースの効能
ラクトースは三大栄養素のひとつである炭水化物のひとつであり重要なエネルギー源となるため分解されたのちに栄養分として血液によって全身に運ばれます。腸内善玉菌である乳酸菌の働きを活性化するため腸内環境を整えて便通をよくしてくれる効能があります。質のよい便が排泄できるということは、活性酸素の影響を受けた有害物質や老廃物などを体のなかから除去してくれる働きがあるということになるので肌荒れや生活習慣病の予防にもその効能が期待できるといえるでしょう。
ラクトースは胎児や乳児の大切なエネルギー源となるだけでなく、肝臓の働きに重要なグリコーゲンの生成にも大きく関わっています。また、アミノ酸や糖たんぱく質、糖脂質や核酸などの体を構成する成分のひとつとして作用する効能もあるといわれています。日本人はラクトースを分解することができない割合も高いので、ラクターゼなどの消化酵素の助けを借りながら栄養成分を摂取するといいでしょう。
「乳児や胎児にとって重要な栄養分であるラクトースの働きや効能について」のまとめ
重要なエネルギー源となるラクトースには、腸内環境を整えて便秘を解消したり老廃物の排出を促したりする働きや効能があります。日本人はラクトースの分解が得意ではないため摂取には注意も必要です。