はじめに
前回に引き続き今回も「睡眠」についてのコラムです。前回の纏めを簡単にしておきましょう。
<前回まとめより>
睡眠は「サーカディアンリズム」と「ホメオスタシス」によってコントロールされています。通常はこれらに問題が発生することはありません。しかし、ストレスが原因で問題発生⇒睡眠の質低下という問題が起きます。ストレス自体を消し去ることが出来れば、一番いいのですが実際難しいのが現実です。その為、「ビタミンC」「パントテン酸」「テアニン」といったサプリメントで体ストレス性を上げることが次善策と言えます。
睡眠不足の慢性化によって引き起こされる問題
これまで紹介したてきたのは、比較的短期間の睡眠不足でも起こりやすい症状です。通常は短期的な睡眠不足の場合は、ホメオスタシスの働きにより、その後に十分な睡眠をとることで帳尻合わせが行われて解消されます。その為、長期的には健康上に大きな影響は出にくいと考えられます。しかし、睡眠不足や不規則な生活が習慣化・慢性化すると、不眠症を始めとした睡眠障害、鬱病、自律神経失調症、生活習慣病と言った身体・精神疾病を引き起こし、脳や身体に深刻な悪影響が出る可能性があります。
不眠症の種類
不眠症は大きく分けて以下の4つに分類されます。
1.入眠障害
ベッドに入っても寝付きが悪い、中々眠れない等の症状で、眠りにつくまでに30分~1時間以上かかる場合がこの症状に分類されます。
2.中途覚醒
眠りについてから、起床する間までに、何度も目が覚めるような症状です。
3.早朝覚醒
起床予定の時間よりもかなり早く目覚めてしまい、その後再び眠る事が出来ないような症状です。
4.熟眠障害
睡眠時間は十分にとっているはずが、眠りが浅いために、睡眠の充足感を得られない(眠り足りない)ように感じる状態です。4つに分類される不眠症状のうち、一つだけ症状が現れる人もいれば、複数の不眠症状が同時に現れる人もいます。複数の不眠症状が同時に現れる場合のほうが、より症状が重度の不眠症である可能性が高いです。
不眠症対策
そこで問題になるのが、不眠症をどの様に解消すれば良いかという点です。多くの場合、不眠症の対策に必要なのは、安易に睡眠導入薬や不眠治療薬に頼るのではなく、なにが不眠症の原因となっているのか、根本の原因をしっかりと把握した上で、個人にとっての適切な対策や治療法が何なのかを探る事が重要です。そして、以下の「快眠のコツ6」を参考に、生活習慣を改善するなどすることで、不眠症対策をする事が重要です。
「快眠のコツ6」
1.眠る前の刺激を控えて就寝に備える
2.適度な運動をする
日中の適度な運動(ヨガやストレッチやウォーキングなど)にはストレスの解消効果があります。特にリズム運動(スクワット、階段の昇り降り、ウォーキング、ランニング等)を5分以上続ける事で、セロトニン神経の活性化に役立つとされ、セロトニンを増やす事で睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌も促すことができ、運動から適度の疲労感を得ることで睡眠の質もよくなり、さらに健康増進と、一石三鳥と言えます。
3.食事に気をつける
睡眠ホルモンであるメラトニンはトリプトファンという必須アミノ酸が原料となります。トリプトファンはたんぱく質に含まれる物質で、牛乳やチーズなどの乳製品、納豆などの豆類や白米などの穀類、肉類などの食卓でもお馴染みの食品にも含まれています。普段の食事にトリプトファンが豊富に含まれる食材を意識することで、メラトニン不足を補うことができます。
逆に、ダイエットによる食事制限や好きなものだけ食べるような偏食は、体調を崩す原因になるだけでなく、トリプトファンが不足する原因にもなるため、バランスよく食事をするよう、十分な注意が必要です。
4.就寝前の光の刺激を抑える
文明の発展とともに、人工的な光が作り出されるようになり、人々は次第に夜遅くまで活動するようになりました。自然な光を浴びるべき時(=昼間)に浴びず、人工光に囲まれて生活することは、人間の自然な生活リズム(太陽が沈んだら眠る)を乱す要素になります。そうした生活を続けることでサーカディアンリズムが乱れ、寝付きが悪くなり、眠りが浅くなり、不眠などの症状が出ます。一方、朝に太陽光を浴びると、その夜には快眠が出来ることも分かっています。光には脳を覚醒させる作用がある為です。朝に太陽光を浴びると、体内時計がリセットされて、夜眠る前に睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されやすくなるため、寝付きが良くなり、睡眠の質も上がり、快眠効果を得やすくなります。
5.カフェイン・アルコールを控える。
お茶やコーヒーに含まれるカフェインには覚醒効果があります。カフェインは摂取後5~7時間効果が持続すると言われています。その為、睡眠前だけでなく、夕方以降はコーヒーやお茶は控えましょう。一方、アルコール類は一般的に寝付きが良くなると考えられがちですが、飲みすぎるとかえって眠りの質が悪くなることが知られており、快眠とは程遠い状態になります。睡眠前の寝酒は、この点からもお薦めできません。
6.室温、湿度の調整。
人間の体温は36度~37度程度です。人間の体温はサーカディアンリズムにより、夜眠りにつく前に徐々に下り、朝目覚める前(朝3時~6時頃)が最も低くなり、昼間の活動中は高い状態を維持されます。言い方を変えれば、体温が高温の状態から低温の状態に移行する時に眠気を覚えます。ここで、眠る前に入浴する人が多いと思いますが、お風呂に入る場合は、ぬるめのお湯にゆっくり使って軽く体を温め、その後自然と体温が下がることで、入眠までの時間を短くすることができます。但し、熱いお湯(おおむね42度以上)に入って体温を上げ過ぎると、体温が下がるのに時間がかかってしまい、寝つきにくくなるので、睡眠前にこの様な入浴をすることはお薦めできません。どうしても熱いお風呂が好きな人は、睡眠までの時間を2~3時間空けるよう注意が必要です。また、睡眠中の布団の中の温度は、夏冬問わず33度程度、湿度は50~60%程度が良いとされており、夏の冷房、冬の暖房の掛け過ぎには注意が必要です。同様の理由から電気毛布などを使用して、睡眠中に体を温めて過ぎてしまわないようにしましょう。また、睡眠時には冷暖房のタイマーを活用する人も多いと思いますが、人間は温度変化には敏感で、入眠時と睡眠中の温度変化が大きいと、寝苦しくなって眼が覚めてしまうことが知られています。電気代は気になりますが、快適な睡眠のためには、暑すぎず、寒すぎない範囲で一定の温度を保てるように、冷暖房は点けっぱなしのほうが良いと言えます。
「第3回コラム:睡眠③」のまとめ
睡眠は「サーカディアンリズム」と「ホメオスタシス」によってコントロールされています。通常はこれらに問題が発生することはありません。しかし、慢性的になると脳や身体に深刻な悪影響が出る不眠症になる可能性が有ります。そうなると、「サーカディアンリズム」と「ホメオスタシス」がうまく機能せずに益々眠れないという悪循環に陥ります。その為、今回紹介した「快眠のコツ6」を参考に、生活習慣を改善するなどすることで、不眠症対策をする事が重要です。